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『第一の犯行(詳細は後に記載)
百合子の紅茶に毒物(ストリキニーネ)が混入される。
※百合子が、毎日午後三時に茶菓子を食べる習慣があることを先に明記。
だが、これは未遂に終わり、百合子は死なない。
毒物が入っていることを明確にするために、飼い犬などが毒を舐めて死ぬという描写を入れる』
「概要には、ミルクティーに毒を入れるも、この時は百合子さんは死なず、飼い犬が毒を舐めるといったことが書かれていますが、この家に犬はいません。しかし菊正君は、できる限り概要に沿えるよう、『自分が一口飲む』という暴挙に出ました。これはストリキニーネの恐ろしさを知らない子どもならではの無茶なやり方だと思います。ポケットに入れていたドブネズミは、おそらく犬の代わりのつもりだったのでしょう。ドブネズミは、菊正君の思惑通り零れたミルクティーを飲んで死んだわけですが」
皆は言葉もなく、清貴の説明に聞き入っている。
「第二の犯行。ここは、子どもならではの迂闊さが出ていました」
「迂闊さって?」
壁際にいた秋人が、思わずという様子で訊ねる。
皆も、秋人と同じ気持ちだったようだ。
「たとえば、秋人さん。あなたが毒入りの梨を誰かの寝室に忍ばせようと思ったとします。あなたの手元には毒物も注射器もある。梨だって簡単に手に入れられる。そうしたら、どうしますか?」
「……え、どうするって?」
「わざわざ、注射器を持って、寝室に行きますか?」
あーいや、と秋人は首を振った。
「そんな危険なことはしねぇな。まず安全なところで自分が用意した梨に毒を注入して、それを持って寝室に忍び込むよ。そして、元々部屋にあった梨とすり替えるかな」
ですよね、と清貴は首を縦に振る。
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