第五幕 そしてすべてが明らかに

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「義春さんが書いた『概要』を、子どもの菊正君が実行することで、周到な計画でありながら、迂闊なところがあるというチグハグな状況となり、僕は大変混乱しました。研究室の埃もそうです。足跡が分からなくなるくらい意図的に踏み荒らしているのに、戸口の下は綺麗なまま。あれでは、『扉からは出入りしてません』と言ってるようなものです。それが、わざとなのか、そうではないのかが分からず、悩まされました。ですが大人が作った犯罪計画書に沿って、子どもが実行したとなれば、すべてに説明がつくんですよ」 「それじゃあ、火事は?」  それまで押し黙っていた菊男が問う。 「それも概要通りです。小説の中で犯人は、『自分が犯人と疑われないため』に自ら研究室に火を放つんです……」  でもよ、と秋人が腕を組む。 「あの時、菊正坊は、ガゼボで勉強していなかったか?」  すると正子は、ふるふると首を振った。 「江田先生が応接室に行った途端、菊正は落ち着きがなくなり、どこかに消えてしまっていたんです」  正子はそう言った後、これ以上は聞くのは辛いという様子で、今も眠りについている菊正を抱き上げ、食堂を後にした。
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