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「――さて、ここから、義春さんの真相に迫っていきたいと思います」
そう言った清貴に、皆はゆっくりと顔を上げた。
「お父様の?」
「ええ、義春さんはなぜ、このような小説を書いたか。彼は、江田先生に編集者を紹介してもらい、出版の計画も進行していました」
そう、これまで犯人が誰だったのかに気を取られて、皆は失念していたのだ。
そもそも義春はなぜ、このような小説を書こうと思ったのか。また、なぜ、その小説を刊行することなく、命を絶ったのか――。
「皆さんは、江田先生の出自はご存じでしたでしょうか?」
そう問うた清貴に、江田がおずおずと口を開く。
「昨夜……僕は皆さんにお伝えしました。自分が華子さんの前夫の息子だと――」
皆もぎこちなく頷いている。
それは話が早くて良かったです、と清貴は安堵したように言う。
「小説を書いた目的ですが、おそらくは義春さんの復讐だったのではないかと」
復讐? と皆は顔をしかめた。
「ええ、そうです。ここからは、僕の想像を交えてお話しさせていただきますね。
――義春さんは晩年になり、ある復讐方法を思いつきました。それは『花屋敷家をモデルにした、暴露本のようなミステリー小説を世に発表する』ということです。その方法を思いついたのが、江田先生との出会いの前か後かは分かりませんが、彼に大きな刺激を受けたのは、たしかだと思います」
と、清貴は江田を見て言う。
江田は申し訳なさそうに身を縮ませる。
皆は何も言わずに、清貴の次の言葉を待っていた。
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