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ふと目に入った春彦さんのスマホの待ち受け画面に、私は目を瞬かせた。
ご当地レンジャーの姿をしている秋人さんだった。
『春彦さんの待ち受け、秋人さんなんですね?』
そう問うと、春彦さんはほんのり頬を赤らめる。
『あー、うん。兄を応援してるのと、あと、弟だけどファンでもあって』
『実の弟さんに、ファンって言ってもらえるなんて、秋人さんも嬉しいでしょうね』
私はふふっと笑って、少し得意になっている秋人さんの顔を思い浮かべた。
『あと、実は僕、子どもの頃からレンジャーとかライダーが大好きでね。この齢になっても、舞台を観に行くくらい好きだから、兄がレンジャーをやってくれて本当に嬉しくて』
春彦さんは照れくささを誤魔化すように、あはは、と笑う。
私が、へぇ、と洩らしている横で、香織の肩がぴくりと動いた。
『仮面ライダー……、特に好きなのはなんですか?』
俯いたままぽつりと訊ねた香織に、春彦さんは、うーん、と唸って腕を組む。
『555やWも好きだけど、電王かなぁ……』
その言葉に、香織は何かに弾かれたように顔を上げた。
『う、うちも、電王が一番で! あと、カブト!』
あー、と春彦さんが手を叩く。
『電王もカブトも、ライダーがめっちゃカッコいいよね。あと、フォーゼ』
『フォーゼっ!』
ライダーについてまったく詳しくない私は二人の様子に圧倒されながら、ろくろを前に作業を再開する。
熱く語る二人の様子はとても愉しげで、見ているだけで癒される。
私は微笑ましい気持ちで、粘土に手を伸ばした。
二人の会話を聞きながらの作業は、余計な雑念が入らず、思いのほか没頭できて、我ながら『まあまあ』な仕上がりになった。
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