第五幕 そしてすべてが明らかに

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 清貴は、再び小説の概要を皆に差し出して見せた。 「そうして義春さんはこのような概要を作り、小説を書き上げました。そして家出の準備も進めていたんです。彼はこの家を出てから小説を刊行し、作家としてデビューすることを計画していたのでしょう。悪名高き花屋敷家の悲劇的当主が書いた半ノンフィクションの暴露本かつミステリー小説は、間違いなく世間の話題をさらう。それこそが、義春さんの復讐であり、彼はそれ程に華子夫人への憎しみを募らせていたんです」  それは仕方ない、という様子で皆は目を伏せている。 「義春さんは同窓会の後、そのまま神戸に向かいました。これは僕の想像ですが、書き上がった原稿は彼の手にあったと思います。彼は旅館から四国の実家に帰っている江田先生に電話を掛けています。江田先生、そうですね?」  確認する清貴に、江田は、ええ、と頷いた。 「その時、どのような会話を?」 「僕の父が亡くなったので、『大変だったね。ご冥福をお祈りいたします』と。その後は、世間話を少し……」 「原稿が書き上がったことを聞いたのは、その時でしたか?」  はい、と江田は頷く。 「それを受けて、あなたはなんて?」 「『読むのが楽しみです』といったことを伝えまして、少し迷ったのですが、父が死に際に遺した言葉を伝えたんです」
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