第五幕 そしてすべてが明らかに

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「……あなたのお父様は、どんな言葉を?」  江田は弱ったように逡巡しながら、そっと口を開く。 「……『花屋敷華子は、自分と結婚した時には、すでに妊娠していた。百合子は自分の子ではない。したがって、お前と百合子に血のつながりはない』――父にそう言われたと」  皆は目を見開いて、江田を見る。 「江田先生、それは、どういうことなの?」 「それじゃあ、百合子姉さんの父親は誰なんだ?」  と、蘭子と菊男が目を泳がせる。  清貴は江田の方を向き、落ち着いた口調で問うた。 「あなたのお父様は、百合子さんの父親をご存じでしたか?」 「いいえ。ただ、華子さんの父親――花屋敷一郎に『華子が結婚前から妊娠していることは誰にも言うな。もし口外したら、お前を殺す』と脅されたそうです。そうして父は大金を受け取って花屋敷家の婿となりました。ですが、華子さんとの夫婦生活は一度もなく、当然のように子どもができなかった。そのため、追い出されたと」 「そのことを、あなたは、義春さんに伝えましたか?」  こくり、と江田は頷いた。 「大変驚いて、言葉を失くしていました。ですが少し経ってから、『話してくれて、ありがとう』と。そして、『いつ、花屋敷家に戻ってくれる?』と訊いてくれました」
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