5433人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「それで、あなたはなんて?」
「血のつながりがないことが分かった以上、僕はますます百合子さんへの想いを抑えられなくなってしまう。ですので、『僕はもう、花屋敷家に行くつもりはないです』と伝えました。そうしたら、『そんなことを言わずに、どうかまた戻ってほしい。あの家には君のような優しい人間が必要だ』と言ってくれたんです」
「そうして、その後、義春氏は命を絶った――」
清貴の言葉に、皆は何も言えずにいた。
「皆さんの中で、百合子さんの父親が誰なのか、見当がつく方はいますか?」
清貴の問いに、ほとんどの者が困惑した表情を浮かべていたが、薔子だけは心当たりがあるようで、ゆらりと暗い顔を上げて、口を開いた。
「……想像もしたくないくらい、おぞましいことですが、おそらく祖父だったのではないでしょうか」
えっ、と皆は、薔子を見る。
蘭子が、信じられない、と胸に手を当てた。
「薔子姉さん、それってどういうこと? お祖父様は、実の娘であるお母様を手籠めにしていたと?」
薔子は、ええ、と青褪めた表情で頷く。
最初のコメントを投稿しよう!