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それから、半月。
事件を解決へと導いた『京都のホームズ』こと家頭清貴は、いつものように自宅の書斎で仕事をしていた。
彼の前には、書類の束がある。それは、各方面から届いた計画書や報告書であり、清貴は内容を確認してから、許可できるものに角印を捺していた。
一見、『判子を捺しているだけ』に見えるが、実は神経と頭を使う作業だ。
そんな清貴の都合などおかまいなしに、
「おーすっ、ホームズ」
と、梶原秋人が書斎に飛び込んでくるのもいつものことだ。
「………僕はこれでも仕事中なんですがね」
清貴は机の上の紙の束に目を落としたまま、角印を捺す。
「おっ、判子なら俺が捺してやるけど?」
「遠慮します」
「なぁ、前から思っていたんだけど、丸い判子と四角い判子、どう違うんだ?」
「角印は、社印ですよ」
清貴は素っ気なく言って、とん、と捺印する。
「毎度のことながら冷てぇなぁ。今日は俺の用事っていうより、兄貴がお前に会いたいっつーから、一緒に来たんだ」
「冬樹さんが……?」
清貴が顔を上げると、秋人の背後から冬樹が顔を出して、そっと頭を下げた。
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