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「清貴君、あらためて、花屋敷家の件はありがとう」
いえいえ、と清貴は立ち上がり、ソファーに座るよう、右手で促した。
冬樹は遠慮がちに、秋人はどっかとソファーに腰を下ろす。
「哀しくも難儀な事件でしたね」
と、清貴も向かい側に腰を下ろした。
そうだな、と冬樹は息をつく。
「その後、華子夫人は意識を取り戻したとか?」
そう問うた清貴に、冬樹は頷いた。
「もう屋敷に戻ったそうだ。孫にバイオリンで殴られ、殺されかけた華子夫人は、余程こたえたのか、毒気を抜かれたように大人しくなったという話だよ」
「……菊正君は?」
「自らの伯母に毒を盛り、祖母に暴行を働いたんだ。更生施設へ送られたよ。まぁ、このことは世間に知られないよう、細心の注意を払ったがね。花屋敷家の孫の悪事となれば、全国津々浦々に知れわたるスキャンダルだ」
でしょうね、と清貴は苦い表情を浮かべる。
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