終 幕

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「そのため、菊正は関西ではなく、関東の更生施設に送られたんだ。菊男と正子も『息子の側にいる』と屋敷を出たそうだ」 「そうでしたか……つまり今、花屋敷家は、華子さん、薔子さん、蘭子さん、百合子さんと、女性だけなんですね」 「なんでも、江田先生が世話役として、屋敷に通ってるそうだぜ」と秋人。 「それは女性陣も心強いでしょうね」 「江田先生、百合子さんと結婚するかもな。そしたら花屋敷家の財産が手に入る。すげぇな、最後に笑うのは江田先生じゃん」 「秋人さん、下世話ですよ」 「でもよ、江田先生にそういう下心ってなかったのかな?」 「いえ、彼は、純粋に百合子さんを想っているでしょう。火事の時、彼は迷いもなく階段を上っていった。その後、百合子さんを見付けると躊躇うことなく抱きかかえて外に出ていた。あれは、本気で想っているが故の動きだと思います」 「無欲の勝利ってやつか」 「まぁ、今後、本当に財産を相続したら、何かが変わるかもしれませんが……」 「変わってほしくねぇなぁ」 「江田先生が言っていたように、百合子さんは本当に天使のような雰囲気を持っています。彼女の側にいるうちは、大丈夫かもしれませんね」  清貴と秋人が和やかに話している中、冬樹は口を真一文字に結んで黙り込んでいる。
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