終 幕

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      *  冬樹が書斎を出た後、秋人は「なあなあ」と興奮気味に身を乗り出す。 「兄貴が『清貴君と食事に行くといい』って小遣いをくれたんだよ。なんか美味いもの食いに行こうぜ!」  秋人は懐から財布を出して、ニッと白い歯を見せる。 「それはいいですね。どこに行きましょうか」 「大丸! 俺は大丸の食堂がいい。今度はライスカレー、食いてぇ」 「いいですね。では、僕はコロッケを食べようと思います」 「お前、コロッケ好きだな」 「プリンも食べたいですね」 「最高だな」  清貴はインバネス・コートを手に取って、ふわりと羽織る。 「それ着ると、また事件の話が来そうだな」 「縁起でもないことを言わないでください」 「冗談だよ」  秋人は笑いながら、清貴とともに書斎を出た。  だが、二人の嫌な予感は的中し、食堂にたどり着く前に、新たな事件に遭遇してしまうのだが、それはまた別の話。  これは少し昔――昭和初期の京都で、『ホームズ』と異名を取る美しい青年が、探偵として活躍する、事件譚である。                 了
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