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相笠先生が書いた『花屋敷家の悲劇』。
その原稿を読み終えたホームズさんは、ふむ、と興味深そうに頷き、彼の隣に座る私は、まるで映画を観終えたような熱っぽさを感じ、胸に手を当てた。
対面に座る相笠先生は、落ち着かない様子で、おずおずと私たちを見る。
「どうだったかしら? おべっかはいらない。ぜひ、忌憚のないご意見を伺いたいわ」
「相笠先生、素晴らしいです! 傑作ミステリーですね!」
すると彼女は、少しばつが悪そうに肩をすくめる。
どうしてそんな様子なのだろう?
そんな私の疑問は、すぐに解けた。
「これは、エラリー・クイーンですね」
「エラリー・クイーン?」
「ご存じなかったですか?」
「あ、もちろん、その名前は知っていますよ」
アガサ・クリスティ、コナン・ドイルと同等に知られた、昔のミステリー作家だ。
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