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「この作品を拝読して、何より驚いたのは、ホームズさんと秋人さんの描写です。台詞も立ち居振る舞いも、本人そのままで。相笠先生、素晴らしいです」
「ありがとう。褒めてばかりいないで、気になったところも言ってもらえないかしら」
苦笑して言う相笠先生に、気になったところ、と私は眉根を寄せた。
「ええと、ラストの冬樹さんは、やりすぎな気がしました」
私がそう言うと、すぐにホームズさんが続ける。
「作中の僕もやりすぎではないかと。蘭子さんや冬樹さんを懐柔して手駒にするだなんて、僕はそんな恐ろしい人間ではないですよ」
「いえ、私はそこは、そのままのホームズさんだと思いましたよ」
「葵さん……」
そんな私とホームズさんのやりとりを前に、相笠先生は、ぷっと笑った。
「ありがとう、葵さん。そして冬樹のところは、ちょっと極端だったかもしれないわね」
「でも、相笠先生が最初に仰ったように、これは創作ですし、やりすぎな気はしたんですが、ホームズさんの黒さが際立っていたのは、良かったと思います」
そう言った私の横で、
「相変わらずひどいですね、葵さん」
とホームズさんは肩をすくめていた。
「ですが、僕も正直驚きました。いくら父にいろいろ聞いたとはいえ、よく、僕たちをここまで書けましたね」
「私は自分で際立ったキャラを作れない分、実在する人間をモデルにした方が良い仕事ができる気がするのよね」
ホームズさんは興味深そうに腕を組んだ。
「当て書き、というものですね」
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