原稿を読み終えて

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「ええ。そして私はトリックも弱いから、その才能はないんだと諦めて、ファンタジーや実際に起こった歴史的事件を基に書いてきたけど、やっぱりミステリー小説は好きなのよ。だから一度、自分が憧れている名作ミステリーのパスティーシュというのをやってみたかったの。けど、私自身、原作のファンでもあるから怖くてね……」  そういうものなんですね、と私は相槌をうつ。 「けど、怖がってても、なんにもならないから、とりあえずやってみようと奮起して」  分かる気がします、と私は頷いた。  本当にやってみたいことは、怖いものだ。  私もそうだった。この骨董品店の雰囲気が好きで、気になりながらも入れなかった。  ホームズさんのこともそうだ。彼が好きでも傷付くのが怖くて、行動に移せなかった。  海外に関してもだ。ニューヨークに行く前、本当は怖くて仕方がなかった。  きっと、想いが強ければ強いほど、怖いのだろう。  でも、彼女が言ったように、怖がっていても何もならないのだ。  思い切って飛び込んだ先に、見えてくるものがある。
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