5436人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「ええ。そして私はトリックも弱いから、その才能はないんだと諦めて、ファンタジーや実際に起こった歴史的事件を基に書いてきたけど、やっぱりミステリー小説は好きなのよ。だから一度、自分が憧れている名作ミステリーのパスティーシュというのをやってみたかったの。けど、私自身、原作のファンでもあるから怖くてね……」
そういうものなんですね、と私は相槌をうつ。
「けど、怖がってても、なんにもならないから、とりあえずやってみようと奮起して」
分かる気がします、と私は頷いた。
本当にやってみたいことは、怖いものだ。
私もそうだった。この骨董品店の雰囲気が好きで、気になりながらも入れなかった。
ホームズさんのこともそうだ。彼が好きでも傷付くのが怖くて、行動に移せなかった。
海外に関してもだ。ニューヨークに行く前、本当は怖くて仕方がなかった。
きっと、想いが強ければ強いほど、怖いのだろう。
でも、彼女が言ったように、怖がっていても何もならないのだ。
思い切って飛び込んだ先に、見えてくるものがある。
最初のコメントを投稿しよう!