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「え、ええ? ホームズさん、気に入らないところなんてあるんですか?」
まさか本当に気に入らないところがある上に、それを口にするとは思わず、私は驚いて声が上ずる。
一方の相笠先生はオロオロと目を泳がせていた。
「ど、どこかしら?」
相笠先生は、すぐにメモ帳とペンを取り出す。
「なぜ、葵さんが登場していないんでしょうか?」
ホームズさんは、これまでにない真顔で問う。
「ホームズさん……」
私は額に手を当て、相笠先生は顔を引きつらせた。
「あ、あー。それ、絶対に言われるだろうって思っていたんだけど、この作中の家頭清貴さんは、葵さんに出会う前なの。まだ、恋を知らない状態なのよ」
ホームズさんは微かに眉根を寄せながらも、なるほど、と腕を組む。
「では、今後、葵さんは登場するのでしょうか?」
「ええと、そうね。……もし、この作品の続編を書けることになったら、葵さんも登場する可能性はあるわ」
するとホームズさんは、ぱぁ、と顔を明るくさせた。
「でも、私としては、登場させたくないのよね。探偵は孤高でクールであってほしいもので……」
ぼそっ、と相笠先生がつぶやいたけれど、ホームズさんは聞こえていないのか、聞こえていない振りをしているのか、嬉しそうに話を続ける。
「それは楽しみですね。羽織袴の葵さん。いえ、昭和初期ですからモダンガールの装いでしょうか。どちらも似合いそうですね……」
ホームズさんは独り言のように洩らした後、
Ⓒヤマウチシズ先生
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