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カラン、
と骨董品店『蔵』のドアベルが鳴り、私は顔を上げた。
背の高いその人物はぎこちなく会釈をして、かぶっていた帽子を取り、ポールハンガーにかける。
相変わらずの剃髪。とても良い頭の形に、時々感心してしまう。
今日の彼は、シャツにジーンズとラフなスタイルだ。
私は彼――円生を前に、にこりと微笑んだ。
「いらっしゃいませ、円生さん。来てくれたんですね」
「……あんたが、俺に話があるて言うから」
円生はぶっきらぼうに言って、カウンター前の椅子に腰を下ろした。
そう、私は、ホームズさんに『円生さんと話したい』と、伝言をお願いした。
「どうしても、直接会って、お礼を伝えたかったんです」
小松さんの事務所に何度か足を運んだのだが、円生は留守にしてばかりだったのだ。
「礼て……」
円生は弱ったように、頬杖をついたまま自分の頭に手を当てる。
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