エピローグ

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 円生は黙って蓋を開ける。 「陶器の湯呑みやな」  深碧色の、円筒状の湯呑みだ。 「はい、最近、私、陶芸を始めまして、それは自分なりに上手くできた方で……綺麗な緑色を出せたと思うんです。この色を見た時、円生さんだ、と思ったんですよね」  言い訳するように、私は早口で言う。 「なんで、俺が深い緑色なんやろ?」  彼は湯呑みを見詰めながら、まるで独り言のように洩らす。  ホームズさんのマグカップは、深い藍色だった。  私の中で、彼は夜空や宇宙を思わせるためだ。  そして円生は――。 「勝手なイメージなんですけど」 「うん?」 「円生さんは、深い森の中にいる感じで」  そう言うと、彼は大きく目を見開いた。 「お礼の品に、こんな手前味噌はないですよね」  さらに恥ずかしくなった私は、湯呑みを片付けようとすると、 「いや、せっかくやし、もろとく」  円生は丁寧な手つきで、湯呑みを木箱に入れた。  良かった、と私は頬を緩ませる。
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