おまけの掌編

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「彼氏が近くにいるのに、他の男性に誘われたら、どうしても困ってしまいますよね? なんと言ってもその彼氏──ああ、僕のことですが」 と、ホームズさんはカウンターの中に入って、私の肩にそっと手を載せて、引き寄せる。 「とても嫉妬深いんです」 にこり、と笑ったホームズさんに、対面に座る男子学生の顔色がなくなっている。 「そそそそそれは失礼しました。いや、ほんと、他意はなかったんですけど、うん、彼氏は嫌な思いしますよね、当然です。ほんと、すみません、失礼しました」 彼は目を泳がせながら早口で言って、逃げるように店を出て行く。 「……他意はなかった? そうやないから、逃げ帰ったんちゃうの?」 彼の姿がなくなった後、ホームズさんは薄く微笑みながら、ぽつりと洩らす。 「……他意がなくたって逃げますよ。 ホームズさん、すっごく黒いオーラ出してましたもん」 私は苦笑して肩をすくめる。
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