5431人が本棚に入れています
本棚に追加
/233ページ
「複数ならOKですけど、二人きりなら行きませんよ。だって」
「だって?」
「……プライベートな状況で、ホームズさんが女性と二人きりで出かけたら、私は嫌だなって思いますもん」
こうした嫉妬心を知られるのは、恥ずかしい。
目を合わせられずにいると、隣から『ゴンッ』と大きな音がした。
驚いて顔を向けると、ホームズさんがカウンターに突っ伏している。
「ホームズさん!?」
「あかん、葵可愛い。ほんま、あかん。ここは店でまだ営業時間中や」
ホームズさんは突っ伏したまま、拳を強く握っている。
私がそっとカウンターに手を置くと、彼はその手をギュッと握ってきた。
「……店が終わったら、デート、できますか?
デートていうか、はよ二人きりになりたい。
一晩中いちゃいちゃしたい」
静かに問うた彼に、私は顔が熱くなるのを感じながら、そっと頷いて、その手を握り返した。
「――葵」
この日の夜、手を握り返して応じたことを少し後悔してしまうくらい、本当に一晩中うんと彼に愛されてしまうのだけど、
それは二人だけの秘密。
〜Fin〜
最初のコメントを投稿しよう!