第一章 それぞれの歩みと心の裏側

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      2  それから数日経った、晴れた日曜の午後。  骨董品店『蔵』の店番を店長にお願いして、私とホームズさんは来客用のお菓子を買うべく、三条通を東へと進み、『本家 船はしや』に向かっていた。  鴨川のすぐ近くにある、古き良き情緒のある店構えのおかき屋さんだ。36b00ac6-b0f0-4deb-bf76-949e9518154d  ここに来たのは先日、市片喜助さんから近々『蔵』に顔を出したいという連絡が入ったが、彼がいつ来られるか分からないとのことで、いつ来てもらっても良いようにお菓子を買って用意しておこう、という話になったためだ。 「以前、喜助さんが、生菓子やおかきが好物だと話していましたしね。おかきでしたら、日持ちもしますし」 「生菓子は、賞味期限が短いですもんね」  そう話しながら、私とホームズさんは、店内に入った。  小さなおかきがたくさん詰まった袋が並んでいて、見ているだけで楽しくなる。  ついつい、いろいろと買い込んでしまう。 「そうだ、葵さん。せっかくですから、小松探偵事務所に顔を出してみましょうか」 「あっ、いいですね。円生さんがいたら、展覧会の話もできますし」
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