第一章 それぞれの歩みと心の裏側

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 私は、ぽかんとして二人の許に歩み寄ろうと、一歩前に出る。 「わー、驚いた。トンビは怖いなぁ」 「ほんまや。前に、葵といる時もパンを盗られたことがあるし」  楽しそうな二人の様子に、私は足を止めた。  良い雰囲気だ。  もし本当にあの二人が交際に至っていたとして、それを私に伝えていないのは、気持ちの問題もあるのだろう。  ちゃんと報告してくれるのを待つとしよう。 「ホームズさん、邪魔しちゃ悪いですし、行きましょうか」  私がそう言うと、彼も異論はないようで、分かりました、と頷く。  気付かない振りをして、その場から離れようとした、その時だ。 「あれ、葵とホームズさん?」 「本当だ、葵さーん、ホームズさーん」  私たちの姿を見付けた香織と春彦さんは、なんの躊躇もなく大きな声を上げた。 「あ、香織、春彦さん」  私たちは、今気が付いた振りをして会釈し、二人の許に歩み寄る。 「葵、今日はバイト休みやったんやね」 「あー、うん?」  店頭にはいないが、遊んでいるわけでもなかったので、私は曖昧に頷く。 「香織さんと春彦さんは、デートですか?」  さらりと訊ねたホームズさんに、私はぎょっとした。  だが、香織と春彦さんは顔を見合わせて、ぷっと笑う。 「いえいえ、ちゃいます、まさかそんな。もうすぐここで、秋人さんのドラマ撮影があるんですよ」 「これから僕たち、ドラマにエキストラ出演するんです」  少し誇らしげに言う二人に、 「秋人さんのドラマのエキストラを?」  私とホームズさんは、周囲を見回した。  二人が言う通り、スタッフらしき人たちが準備をしている。
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