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ホームズさんは思い出したように、ああ、と口を開いた。
「そのドラマは、もしかして、『京日和事件簿』ですか?」
「あっ、前に言ってましたね」
秋人さんがプレゼンターを務めていた京都紹介番組『京日和』が、二時間サスペンスドラマになるという話は聞いていたのだ。
そうですそうです、と二人は笑顔で頷く。
「鴨川沿いで女優の死体が発見されるシーンやって」
「ドキドキするよね」
ザッとだが、冒頭のあらすじは聞いていた。
たしか、その女優さんは、アイドルの三人に『まるたけえびすに、気を付けて』という謎の言葉を伝えた翌日、鴨川の河川敷で遺体となって発見される、という流れだった。
「そうだ。葵さんとホームズさんも、良かったら一緒に出ませんか?」
「そやそや、一緒に出ぇへん?」
前のめりになる二人に、ホームズさんは、いえ、と手をかざす。
「僕は遠慮しますが、葵さん、もし良かったら」
私も、いえ、と首を振った。
「実は今、お遣いの途中で」
そうなんや、と香織は少し残念そうに言う。
「香織も春彦さんも、エキストラがんばってね」
「放送、楽しみにしていますね」
私たちは、二人に手を振って、河原から石の階段を上り、四条通に出た。
四条大橋から、香織と春彦さんを見下ろすと、二人も私たちの方を向いていて、大きく手を振っている。
「楽しそうですね」
私は、はい、と小さく笑って手を振り返す。
私たちは、そのまま木屋町通を南へと下がった。
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