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「やっぱり、分かるかな?」
「ええ。わざわざ、会いたいと事前に連絡くださったくらいですから」
「そうだよね。分かるよね」
喜助さんは、ふぅ、と息を吐く。
少しの沈黙の後、喜助さんは意を決したように切り出した。
「君たちには、僕のみっともない姿を見せているから話せるけど……」
その言葉を聞いて、かつての事件が蘇り、つい頬が引きつってしまう。
当時、彼は、複数の女性と関係を持っていた。
宝塚出身の女優・浅宮麗さん、グラビアアイドルの叶野アイリさんと同時に交際しながら、資産家の令嬢と婚約。それだけでも驚きだったのに、なんと実の伯父の奥さんとも不倫していたのだ。
痴情のもつれから、喜助さんは脅迫状を受け取る事態にまで発展し、命を狙われたものの、ホームズさんが解決に導いた。
「――あの事件の後、僕は複数の女性と関係を持つのはやめたんだ」
喜助さんは、少し誇らしげに言う。
まるで褒めてもらいたいような雰囲気だが、至極当然のことだ。
「だけど、麗さんとの関係だけは続いていてね。でも、『恋人同士』というよりも、芸能界という過酷な場でがんばる戦友のような感じで、とてもアッサリしたものだったんだ……」
恋人同士のようにベタベタするわけではなく、友達のように支え合い、時に肌も重ねる。
喜助さんと麗さんだからこその距離感なのかもしれない。
私とホームズさんは黙って相槌をうった。
ちなみに浅宮麗さんは、今やテレビで大活躍している。
コンスタントにドラマに出演しているし、主役を張るものも少なくない。元宝塚の男役スターということもあり、男勝りの弁護士や女医といった役どころが多い。
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