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私もコスモスだと思っていたので、少し戸惑った。
「それじゃあ、この花は?」
そんな私たちを前に、ホームズさんは本棚から花図鑑を取り出して、ぱらぱらとページを開いて、カウンターの上に置いた。
「この花ですよ」
そこには、白い花びらが五枚、中央の柱頭や花糸の先のやくが黄色い可憐な花の写真が載っていた。花の側には、黄色い柑橘の実がなっている。
「あっ、丸い実もある。これですね」
「本当だ。この花の名前は……」
私と喜助さんは、あらためて本に目を向けた。
『橘』と書かれている。
「これは、橘の花。つまり『花橘』ですよ」
「……花橘だったんだ」
喜助さんは、花図鑑に顔を近付ける。
そのページには、花言葉も記されていて、橘の花言葉は、『追憶』だった。
追憶という意味を持つ花の絵を、時計の蓋に刻む。
喜助さんは、ますます分からなくなったようで、ううっ、と唸って額に拳を当てた。
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