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暦は十月も下旬。
秋の寂しさとは無縁の京都は、日々活気を増している。
芸術の秋とはよく言ったもので、この骨董品店『蔵』にも来客が増えていた。
今、ショーウィンドウは、『大正ロマン』をテーマにしたものを飾っている。
マネキンに市松模様の着物と袴を着せ、当時を彷彿とさせる家具を展示。
チェストの上には陶器の置時計、テーブルの上にはレトロで華やかなカップ&ソーサーに、花を思わせるステンドグラスのランプを置いてみた。
この展示がなかなか好評で、通りかかる若い男女が足を止めてくれている。
「ああ、また、通行人が葵さんの展示を見ていましたよ」
カウンターの中で商品を丁寧に拭いていたホームズさんが、手を止めて言う。
掃除をしていた私は振り返って、ショーウィンドウを確認した。
若い女の子二人が、和洋折衷で素敵や、と展示を見ていた。
「本当だ。思ったより、若い子のウケが良くて嬉しいです」
「あの狭いスペースに『大正ロマン』を表現した展示をするなんて、僕には思いつきもしなかったことです。素晴らしいですね」
熱っぽく言う彼に、頬が熱くなって、そんな、と私は身を小さくさせた。
「ミーハーなだけですよ」
「おかげで、うちにある香蘭社の商品も売れてまして、ありがたいことです」
「わあ、本当ですか?」
香蘭社とは、社名は変わってはいるものの、江戸時代から続く有田焼の老舗だ。
私の中では『大正ロマン』のイメージがあり、香蘭社の商品を展示している。
テーブルの上に置いてあるカップ&ソーサーは、金彩に縁どられた中に松竹梅が描かれたもの。
自分のディスプレイがキッカケで商品が売れるなんて、こんな嬉しいことはない。
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