第二章 劇中劇の悲劇

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「良かった。でも、もし盗まれたり、割れたりしたら、またがんばって作りますね。また陶芸サークルに参加することにしたので」 「それは嬉しいです。入部されるんですか?」 「いえ、時々のゲスト参加でいいって言ってくれたんですよ。前に、ホームズさんから抽象画のレクチャーを受けて、価値観は人それぞれだし、下手くそでも自分が好きだと思えるものを作れたらいいな、と考えるようになったんです」  それは良かった、とホームズさんが嬉しそうに目を細めた、その時だ。  少し乱暴に扉が開かれ、カランッとドアベルが鳴った。  私は戸惑いながら、扉の方に目を向けると、そこには黒髪のツインテールに赤いカラーコンタクトを付け、真っ黒なドレスを纏った女性が息を切らしながら仁王立ちしていた。 「相笠先生……」  ホームズさんは、ぱちりと目を見開いて言う。  突然現われたのは、以前、吉田山荘の真古館で朗読会を開いた相笠くりすだった。  彼女は、ゴスロリファッションと、それに似合わないダークな作品を書くことで知られ、多くのヒット作を出している女流作家だ。  彼女は数年前、ごく親しい人物に殺されかけるという事件に遭い、その犯人をホームズさんが暴いた。その後は、それまでのスタイルをやめて、ごく普通のファッションに身を包むようになっていたのだが……。  ホームズさんは、いらっしゃいませ、と微笑む。 Ⓒ秋月壱葉先生3745710f-25f2-44c2-852b-b37368982af2
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