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「再び、ドレスを着られるようになったんですね」
笑顔でそう続けるホームズさんに、相笠先生は、ええ、と頷いて、大股でカウンターに歩み寄る。
「やっぱりこういう格好が好きで、戻すことにしたのよ。世間ウケもいいしね。それより、あそこの展示、すっごくいいわね! 私、明治・大正・昭和初期のロマン溢れる雰囲気が大好きなの!」
彼女はショーウィンドウを指して、やや興奮気味に言う。
ありがとうございます、と私たちは頭を下げた。
思えば、相笠先生が好みそうな雰囲気ではある。
「これはもう……運命としか言いようがないわね」
彼女は熱っぽく言って、胸に手を当てた。
「運命?」
何を言ってるのだろう、と私とホームズさんは顔を見合わせた。
「清貴さん――」
相笠先生は、カウンターに手をついて勢いよく前のめりになる。
「お願いがあるの」
その言葉に、少し嫌な予感がするのだろう、ホームズさんは微かに眉根を寄せる。
「……また、撮影会はごめんですよ」
私は思わず噴き出してしまった。
以前も彼女はここを訪れて、ホームズさんに妙なお願いをしたことがあったのだ。
笑いごとではありませんよ、とホームズさんは、さらに顔をしかめる。
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