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「あなたのことは、伊集院先生にこと細かく話を伺っているから、自分では『あなたを書ける』という自信があるのだけど、その許可をもらいたくて」
伊集院先生とはホームズさんの父であり、作家の家頭武史さんのこと。彼の筆名が伊集院武史といった。
「許可って……」
ホームズさんは困惑した様子だったけれど、私は胸が躍った。
「相笠先生、ジャンルは何ですか?」
「それはもちろん、ミステリーよ」
彼女は胸を張って答える。
ミステリーですか……と、ホームズさんは興味深そうにつぶやく。
その表情から、『恋愛やファンタジーじゃないならば、まぁ良いかもしれない』という思いが窺えた。前回の撮影会の件もあり、今度は小説の中でヴァンパイアにでもされるのではないか、と懸念していた節もある。
「名前などは変えていただけるんですよね?」
「も、もちろん」
「それなら、別に反対する理由はありませんよ」
ホームズさんがそう言うと、相笠先生は隣の椅子に置いているトートバッグから茶封筒をごそごそと取り出して、カウンターの上に置いた。
「というか、もう書いてしまったの……」
ええっ⁉ と私とホームズさんは目を丸くした。
「もう書いてしまわれたんですか?」
そうなの、と彼女は少し申し訳なさそうに、茶封筒の中から原稿を取り出して、スッとホームズさんの前に置く。
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