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絶対に離さないという目で見詰める彼に、清貴は、やれやれ、と肩をすくめる。
「勝手についてこられる分には、僕は知りません」
よっしゃ、と秋人は拳を握った。
清貴は颯爽と歩き、書斎を出る。
秋人はその後を追いながら、あらためて清貴の姿を見て、ぷっ、と笑った。
「それにしても、なんだよ、その格好。コートの色が黒いだけで、形はまんま『シャーロック・ホームズ』じゃん」
「一応、捜査に協力するわけですから、一目で探偵っぽい格好をしていた方が周囲に対しても話が早いんですよ」
「とか言って、完全に趣味だろ。お前がシャーロックなら、隣にいる俺は小林少年か?」
「『小林少年』は明智小五郎の助手ですよ」
「分かってるよ。シャーロック・ホームズの助手はワトソンだろ? でも俺はほら美少年だから、どちらかというと医者のワトソンより、小林少年かなって」
「僕には、医者だろうと美少年だろうと助手は必要ないので、隣にいなくても良いですよ?」
「ほんと、お前、そういうところが『いけず』って言われるんだぞ!」
秋人は声を上げながら小走りで清貴の後を追い、断りも入れずに屋敷の前で待機していた自動車に乗り込んだ。
一緒に行きたいと、秋人が駄々をこねた理由の一つはこれだった。
もちろん事件にも興味はある。
だが、それ以上に家頭家が所有する自動車、『トヨダAA型乗用車』に乗りたかったのだ。
運転はもちろん、専属の運転手が行う。
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