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秋人は、清貴とともに後部座席に座り込み、嬉々として町を眺めていた。
「なあなあ、頼む、四条通を走ってくれよ」
「……そんな遠回りをさせなくても」
「いいだろ、ドライブだ」
秋人のリクエストにより、車はわざわざ東大路通を南下し、八坂神社前まできて四条通を西へと走行した。
鴨川には石造りの大きな橋が架かっていて、橋を渡る手前の北側に菊水、南側に南座、橋を渡りきったところに、東華菜館が建っている。
もう少し西へ進むと、大丸京都店も見えてくる。
「大丸だ、大丸! またあそこの食堂に行ってみたいなぁ」
大丸京都店は、高級百貨店の代名詞である。庶民が入れることもできるが、やはり憧れの場所だ。
内装外装ともに凝った洋風建築で豪華なシャンデリアが吊り下がる食堂は、裕福な町人がつかの間の高級感を満喫できる憩いの場でもあった。
「たしか、冬樹さんが警官になられたお祝いに、大丸で食事をしたとか」
「そうなんだよ。俺はオムライス、弟はコロッケ、兄貴はライスカレーを食べたんだぜ」
「どれも間違いのないメニューですね」
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