第一幕 最初の事件

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 秋人は、まーなー、と声を上げる。 「花屋敷家の主役は、常に妻の華子って感じだもんな。今でこそ六十代の派手なばーさんだけど、若い頃は相当、美人だったって話だし」  ああ、と冬樹は答えた。 「花屋敷華子の母は祇園で評判の美しい芸妓だったそうだ。 一代で財を築いた花屋敷一郎が見初めて、金にものを言わせて結婚をしている。だが、その母は体が弱く、華子が八つの時に病気で他界している。  一郎は、大層嘆いて、残された一人娘の華子を溺愛し、甘やかしたそうだ。華子は、見事に母親の美貌を受け継いで、美しく育った。  若い頃の彼女は『社交界の華』と謳われ、まさに手に入らない物はない無敵状態だったとか」  冬樹の言葉に、秋人は、うんうん、と首を縦に振る。 「その頃の栄光をまだ引きずってるのか、今もめちゃくちゃ派手な格好してるよな。胸元がぱっくり開いた派手なドレスで」 「秋人、声を抑えろ。ここは、花屋敷邸だぞ」  ぴしゃりと言った冬樹に、秋人は慌てて口に手を当てる。  すると清貴は、ふふっ、と笑う。 「まぁ、僕は年齢や外見はさておき、本人が好きなファッションに身を包むのが一番だと思いますがね」 「おっ、それは、定番の『京男の嫌味』なのか?」 「定番ってなんですか、失礼な。違いますよ、本心です。僕自身もそうしていますし」  と、清貴は肩をすくめる。
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