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「――そういう状況だったんだ」
冬樹はそこまで話して、はぁ、と息を吐き出す。
「それは大変でしたね。で、誰が毒を?」
そう問うた清貴に、冬樹は苦い表情で首を振る。
「屋敷にいた者、全員のアリバイを聞いたのだが、全員、アリバイがないんだよ」
秋人は、あちゃー、と顔をしかめる。
「全員にアリバイがあるのもアレだけど、ないっていうのもまたアレなんだな」
「ミルクティーを淹れた時の詳しい状況を教えていただけますか?」
すっかり興味津々の清貴を見て、冬樹は嬉しそうに頷く。
「使用人の女性が、いつものように淹れたという話だ。百合子さんは毎日の習慣で、午後三時過ぎに食堂を訪れる。
そのため、使用人は午後二時五十分に準備を始めるそうだ。お湯を沸かして、カップを出し、皿に焼き菓子――その日はビスケットだったが――を用意した。そして、その日も午後三時の時計の音が鳴る少し前には、食堂のテーブルに置いたそうだ」
「その日、百合子さんは、何分頃に食堂に来られたのでしょうか?」
冬樹は、たしか……、とポケットから手帳を取り出して、確認する。
「『午後三時五分を少し過ぎたくらい』と使用人は答えている」
「その間、食堂を訪れた者は?」
清貴がそう問うと、冬樹は苦々しい表情で首を振った。
「分からないそうだ。百合子さんがスムーズに入って来られるよう、食堂の扉は開けっ放しにしておいたのと、使用人は台所で洗い物をしていたから、食堂に誰が訪れたのかは、まったく分からないと。ああ、台所は食堂の奥にあるんだ。台所というより、レストランの厨房のようだったよ」
「その時、台所には、その使用人が一人だけ?」
「いや、使用人の隣でコックが夕食の下ごしらえをしていて、二人は雑談をしていたそうだ」
ふむ、と清貴は顎に手を当てる。
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