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「ホームズ、ひとつ大きなことを見逃しているぜ? 犯人はその鍵を持っている華子夫人だったんだよ。不自由な娘を溺愛する振りをして、実は憎んでいたんだ」
「それも、可能性はゼロではありませんね」
清貴は口にしていないだけで、その可能性も考えていたらしく、さらりと言う。
だが、冬樹が深刻な表情で首を振った。
「それはないんだ」
「どうしてだよ?」
「第二の事件が起こった。今日、華子夫人が襲われたんだ」
――えっ、と清貴と秋人は目を見開く。
「先週の毒物について、今も真相を突き止められていない中、起こった事件だ」
「それで、長女の薔子さんは警察に不信感を抱き……」
「ホームズを指名したってわけだな」
二人は納得し、冬樹はふがいなさそうに頭を掻く。
「花屋敷家の人間は、まだ来そうにないな。とりあえず、事件現場まで来てほしい」
そう言って腰を上げた冬樹に、清貴と秋人は頷いて立ち上がる。
応接室の扉を開けると、広いホールがあった。
「………」
冬樹の後ろを歩いていた清貴は足を止めて、壁を見やる。
「ホームズ、どうかしたか?」
振り返って問う秋人に、清貴は「いえ」と壁から視線を離して、歩き出した。
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