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母と娘の二人が使っていた部屋は、豪華なホテルのツインルームのようにベッドが二つ、綺麗に並んでいる。
また、これもホテルのようにバスルームが備えつけられていた。
ベッドの間にはチェストがあり、そこに果物が置いてある。
この部屋には暖炉があり、暖炉の上には燭台に美しい花瓶が飾られていた。
美しい部屋だったが、秋人は床を見て真っ青になった。
血痕が広がっている。
この部屋のカーペットはモスグリーンのため、血の色がはっきりと見えた。
どんな惨劇がここで繰り広げられたのかと、目を覆いたくなる。
実際、秋人は「ぎゃっ」と呻いて、清貴の袖をつかんで背後に回った。
「ついに殺人事件が……」
震えるように言う秋人に、冬樹は「いや」と首を振った。
「華子夫人は、亡くなってない」
へっ? と秋人は顔を上げ、
「やはりそうでしたか」
と、清貴は相槌をうった。
「な、なんでだよ。血の海じゃねぇか!」
「冬樹さんは、華子夫人が『襲われた』と言いましたが、『殺された』とは言ってません。それに一見、惨劇のように見えますが、人が死に至るほどの血の量ではないでしょう」
清貴はモスグリーンのカーペットに付着した血の量を確認しながら、冷静に言った。
この状況でどうして顔色も変えずにいられるんだよ、と血が苦手な秋人は、気分が悪くなって、手で口を覆いながら洩らす。
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