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さて、と清貴は、現場をぐるりと見回した。
気になるのは、床のいたるところに散らばっている白い粉だ。
ここが台所なら、小麦粉でもこぼしたのかと思うだろう。
白い粉が付着した足跡も、そこら中についている。
「見たところ、足跡は男物の靴のようですね」
「ああ、結構な大きさだな」
と、秋人も気を取り直したように、ポケットから虫眼鏡を出してそれらしく言い、息を呑む。
花屋敷家は異国風だが、外靴のまま過ごす家ではない。
玄関で靴を脱いで、スリッパに履き替える。
犯人は土足でこの部屋に侵入したということだ。
「二十八センチくらいで、左右の踵がすり減った靴のようですね。つま先にかけて尖ったデザインですが、足跡を見る限り革靴ではないようです」
「今、屋敷に該当する靴はないか、探させているところだ」
清貴と冬樹が冷静に言葉を交わしている中、薔子は部屋の入口で、血を見たくないように目をそらしていた。
「第一発見者は?」
清貴の問いに、薔子の後ろで待機をしていた使用人が会釈をする。
「わ、私です。奥様も百合子お嬢様も朝起きるのが早いので、私は毎朝六時に様子を窺いに来るんです。今朝はノックをしてもお返事がなかったので、もしかしたらお加減が悪いのかもしれないとドアを開けたところ、奥様が血まみれで床に倒れていました。まだ息があったので、すぐ病院へ」
「助かったなら良かったなぁ」
秋人は胸に手を当てる。
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