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The・私の地味生活☆
さわさわと教室のカーテンが、ゆらりゆらりと揺れる。
窓側の一番奥の席に座って授業を受けている朱音はチラッと窓の外を見た。
空は快晴で一面が淡いスカイブルーでおおわれている。
地表は緑がかがやく木々や草が広がっていて見ているだけでも目がいやされて、とても美しい光景だ。
小学校六年生になって今日で五日がたつ。
時間って振り返ると、あっという間に過ぎてしまうのに気づく。
このクラスは小学三年生から人数が足りなくて二クラスにできなかったから、学生の最大のイベントの一つであるクラス替えというものはないんだけど。
今年で卒業って考えると、残りの時間を大切にしないといけないって思う。
キーンコーンカーンコーン
教室中に昼休みの始まりのチャイムが響く。
「あぁ……チャイムが鳴っちゃったか。ちょっとキリが悪いが、今日はここで授業を終わりにする。続きは明日やるぞー」
担任の松浦先生が短い髪の毛をかいた。
松浦先生がそう言ったその瞬間、クラスメイト女子は友達と話し始める。
そして、男子は教室の隅にあるサッカーボールを光の速さで奪い取って全速力で校庭に向かう。
バァーン
勢いよくドアが開いて、何人もの女子が一人の男子に詰め寄る。
「キャー、影山様! 今日もすごくカッコいいです!」
「影山様はいつ見てもカッコよくてお美しいです!」
「影山様~、今日はどんなサッカーの神プレーをしてくださるのですか?」
甘い声を放つ女子たちの真ん中にすらりと男子が立っている。
その男子の顔は自分の立ち位置をわかっていないのか、きょとんとしていた。
あぁ、またやってる。
この場面を何回見たのかな。
もう今学期になってからこんなのが当たり前だ。
まぁ、私の同じクラスにはさっきの男子――〈完璧男子〉がいるからね。
でも、別にあの〈完璧男子〉と私は天と地ぐらい遠い存在で正直に言ってしまえば関係ない。
出雲朱音はキャー、キャーわめく女子たちの声をかき消すように本を持ってイスからわざと音を出して立ち上がった。
「今日も図書室に行くの?」
姫海堂アリサがツインテールを朱音の近くにかけ寄る。
「うん、一緒に行こっか」
「いいよ、早く行こうよ。昼休みの時間が無くなっちゃうよ」
アリサがそう言うと二人は一緒にろう下を歩き始めた。
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