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一人だと距離のあるように感じる教室から図書館の道のりだがニ人で話しながら行くとあっという間に図書室に着く。
「あら、今日も来たのね。うれしいわぁ、小六になって忙しいかなって思ってさみしいなと思っていたのだけれど」
司書の神崎先生が優しく微笑んだ。
「はい、昔も今も図書室が一番落ち着くんです。返却お願いできますか?」
朱音は落ち着いた声で答えた。
神崎先生は朱音が小三のときに仙泉小学校にやってきた学校司書だ。
穏やかで優しくいつも図書室来る朱音のような子から図書の時間にしか来ないクラスの男子にも優しい気遣いで本を紹介してくれる。
誰にでも優しくて、生徒からの絶大な人気を誇るので今年の図書委員会の立候補者はほかの人気な委員会の放送委員会や運動委員会を抑えて一番人気だった気がする。
神崎先生は朱音が借りていた本を両手で受け取ると返却の手続きをする。
朱音はその様子を見ると、近くにあるカーテンをバッとカーテンを開ける。
暖かい日差しとともにカーテンの外に見えたのは一面アクアブルーの海だ。
どこまでも続きそうな水平線に広がる海が波と太陽の光でところどころキラキラと輝いていた。
ここの海はいつ見てもきれいだなぁ……。
仙泉小学校は海にとても近い小学校で図書室のカーテンを開けると一面に海が見える。
私はこの場所からみるこの景色がとても好きだった。
でも、もうこの景色も卒業したら見られないんだよなぁ。
小学校最後の一年間、しっかりとこの海を目に焼き付けておかないと。
朱音は海に背を向けると、向かい側の本棚に足を運ぶ。
……ここの本棚はほとんど読み終わっているけど面白い本ばっかりなんだよね。
特にこの怖い本が短編集になったシリーズ本の『Killer』とか。
あっ、Killerは学校の中でも人気シリーズで借りられているもののほうが多いけど今日は奇跡的に結構残っている。
せっかくだから、また読んでみようかな。
朱音はがばっとそのシリーズを五冊持って行く。
「もう、読む本決めたの?」
隣の本棚に手を伸ばしかけていたアリサから声がする。
「うん、このシリーズがとっても面白くてね。何度も読みたくなるんだ」
「そうなんだ……、私もその本借りてみようかな。そのシリーズの一巻ってある?」
アリサが言うと、朱音は五冊ある本の中から器用に一巻を引き抜く。
「ありがとう」
アリサが笑顔で本を受け取る。
朱音はカウンターへ向かうと神崎先生に本を差し出した。
「今日は四冊ね。このシリーズ、面白いわよね」
「はい、特に三巻の猫にまつわる怖い話は少しゾクッとしましたね。いつもは猫ってかわいくていやされるなぁって思いますけど、もしも猫に呪われるとかもしも自分の身に起きたら毎日が大変なことになりそうだなって思います」
このシリーズが本当に好きで朱音はつい、神崎先生にこのシリーズについて語ってしまう。
「あ、そうそう。七巻の水についてのお話も結構、面白かったわよ。今は借りられているけどもしよかったら今度読んでみてね」
そんな朱音に対しても神崎先生はいつもの笑顔で本をすすめてくれた。
「ありがとうございます、一度読んだことがありますがもしも機会があったら今度ぜひ読んでみますね」
朱音は笑顔で言うと机に本を重ねる。
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