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いきなり現れたイケメン
「えーっと……、固まっているけど大丈夫か?」
その人は朱音の顔の前でわざと手を振る。
その声の正体は——同じクラスの影山湊だった。
「か、影山君⁉ どうしてここに……」
朱音は少し時間差をつけてから目を白黒させながら影山君に聞く。
影山湊は学年一のイケメンでファンクラブができるほどの人気ぶりだ。
しかも、顔がイケメンだけでなく勉強もスポーツもできるいわゆる〈完璧男子〉である。
いつも昼休みは校庭でクラスメイトとサッカーをやっているアウトドア派の影山君が図書室に来ることなんて雨が降っていてサッカーができない日でも全くと言っていいほどめったにないし、私みたいな〈地味系女子〉に用があるなんて絶対にないと思ってた。
まずは気持ちを落ち着けて、冷静にっ……!
朱音はゆっくり、ゆっくりと深呼吸した。
さぁ、気を取り直して……。
「私に何か用があるの?」
朱音は内心パニックになりながらも、しっかりと影山君の目を見ながら言う。
「え、えーっと……この本面白いよな。怖い話が短編集になっていてスキマ時間で少しずつ読めるし」
「う、うん……」
アリサ以外とはあんまり話さないからどうすればいいか分からない!
でも、こういうのは自然にそつなく話さないと。
せっかく影山君が話しかけてくれているから。
「あっ、ゴメンな。その……視界にその本が入ったから」
「ううん、別にいいよ」
少しあわてる影山君に対して朱音は笑顔で接した。
「それで、話があるんだけど……」
影山君がハッとすると、さっきまで少し緊張していた顔はウソだったかのようになくなって真剣な表情に変わっていた。
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