Indigestion

高3．梅雨

　駐車場もほとんどない小さな印刷屋を左に、地上の三角洲のような場所でチャコと信号待ちをしている。

「テストどうだった？」
「やばい、赤点かも。チャコは？」
「うちの学校はもう英語だけ返ってきたよ。ギリ平均点」
「早いね。てか新作シェイクって何味？」
「夏みかんらしいよ」

　目の前の大きな交差点は一斉に赤信号になる。歩行者専用信号が青に変わることを見越して自転車のペダルに足をかけた、ところでポケットのスマホが短く震える。通知をちらっと確認すると「生10、よろしく」の文字たち。

　店はまさに渡ろうとしている交差点との反対側、レンタルビデオ屋の隣にある。

「げ」

　私は短く呟いて、ハンドルをぐいっと90度曲げた。