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「こんにちは」
店の脇の小窓を開けたらすぐ、じゅわーっと油の弾ける音と餃子の焼ける香ばしい匂いがもわんと飛び出してくる。制服も夏服になり、梅雨は来週中には明けるという。西日は少し濁っているけど、店内は外より暑そうだ。
「いらっしゃい、あら沼尾さんとこの」
「あ、どうも。生10人前お願いします」
母からのメール通り注文する。顔を出した奥さんは首にタオルを巻いていて、鉄板の前に立つ店主も汗ばんでいるように見えた。
「羊子、何か言ってよー。びっくりしたじゃん」
「ごめんごめん」
スタンドを立てた自転車にチャコがやっと追いつく。いきなり方向転換したことを不満げに訴えるけど、適当に謝る。
「はい、冷凍生10人前ね」
「ありがとうございます」
小さな枠からぎゅうぎゅうに出てくる餃子の箱を袋ごと受け取り、お金を渡す。
「お母さんによろしくね」
「はい」
「またどうぞ」
小窓が閉まると、餃子の焼ける音は遠ざかった。
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