高3.梅雨

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「お待たせ」 「いーえ、羊子んちって餃子好きだよね」 「そう? チャコも食べるじゃん」  10人前をバサッとかごに入れて横断歩道へ向かう。 「うちはせいぜい月イチだよ」  後ろから答えが聞こえた。 「月イチは足りない」 「まじで? じゃあ今度食べ比べ行かない?」  宇都宮に、と続ける。 「行く」 「即答かよ」  交差点の歩行者専用信号が青になった。 「ねえ羊子、寄るんだよね?」  見上げているような声でファーストフード店の看板を読む。 「うん……あ! 寄れないじゃん」  チャコは後ろでわははと笑った。 「ウケる、羊子ママのタイミングまじ神」 「神じゃないし笑い事じゃないよ、すっかり忘れてた。一回家帰ってからでもいい?」  言いながら店の前を通り過ぎる。 「えー家帰ってからじゃあ遠いなあ。また今度に」    冷凍生10人前を買う前に行けばよかった。口では謝りながらも、気付いたなら言ってくれればよかったのにと思ってペダルを強めに踏みこんだ。
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