庶民の俺が金持ち練に編入するまで

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ドンという鈍い音と共に、体格の良い訳では無い俺は後ろに弾け飛んだ。尻を強くうちつけ顔を顰めながらも慌てて前を見ると、恐ろしいくらいに綺麗な顔をした男が怪訝そうにこちらを見下ろしていた。 濡れるようなウルフカットの黒髪に、燃えるような紅い瞳。無駄のない整った鼻や口のパーツが綺麗に顔の中に並べられている。 金持ち練の奴らとは面識がないとは言ったけど、庶民練の生徒は金持ち練の有名な生徒達の事くらいは知っている。金持ち練の生徒はこちらの事など知りもしないだろうが、金持ち練には美形が多く酷く目立つのだ。親衛隊なんていう非日常的なものまで作られているし。 その中でも特に有名な、生徒会長の風見憐(かざみれん)。 それが俺の目の前に立ち塞がっている男だった。 金持ち練の中でも選ばれた人間しかなれないと噂の生徒会、その頂点に立つ生徒会長。そんな人間に思い切りぶつかってしまい、大袈裟だが走馬灯のように頭の中に次々と今までの思い出が流れる。 …俺はなんて事を、と顔から血の気がさぁっと引いていくのが自分でも分かる。庶民如きが金持ちに思い切りぶつかってしまって、その相手がその中でも権力者だったら、その先は……。 青ざめたまま動けないでいると、そのまま俺を怪訝そうに見つめていた風見さんはゆっくりと俺の前にしゃがみ、手を差し出した。 …………えっ? ポカンとした俺の表情を見て、また怪訝そうに首を傾げる風見さん。 「…どうした?ぶつかってしまってすまなかったな。俺も前をよくみていなかった」 紡がれた言葉に更に驚く。……俺の緊張していた気持ちは風見さんの優しい言葉で一瞬にして溶けた。 思わず風見さんの手を取る。すると、風見さんは軽々と俺の手を引いて立ち上がらせてくれる。 「あの、その…こ、こちらこそすみません。俺、金持ち練は初めてでまよってしまって…………」 「金持ち練?」 「…………あっ!」 気が緩んでいた俺は、しまったと口を手で塞いだ。こんな呼び方をしているとバレたら馬鹿にしていると思われるのではないだろうか?口から出てしまったものを仕舞う事など出来ず、恐る恐る風見さんの様子を伺った。
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