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食堂につくと、食堂も随分と豪華だった。高級レストランかのような風貌で俺は呆気に取られる。赤と黒を貴重としたシンプルながらに上品な内装で、使われている皿や器もどれも高そう。
ここでの食事はタッチパネル式のようだ。カードキーを差し込み料理を選ぶと、席までウェイトレスさんが料理を運んできてくれるらしい。学生の食堂なのにさながらレストランだ。
「料金は口座から引き落としだ」
憐さんの言葉に俺は固まった。
金、持ってない。叔父さんがどんな風にしてくれているのかは知らないが元々叔父さんは俺を桜寮に入れるつもりだったのだろう、足りるわけが無い。
俺の表情を見てか、海斗が俺の頭を優しく撫でる。驚いて海斗を見つめると
「心配しなくていいよ。俺と一緒に引き落としとくから好きなもん食えよ」
と謎のウインクを決めてくる。
何から何まで海斗に払わせている事実が申し訳なさ過ぎていたたまれない。でも海斗に払わせる訳にはいかないと言っても1度決めたら頑固なやつだ、絶対に払ってしまう。かと言って俺に払う宛があるわけもない。
……世話になろう。
将来、働いてボーナスが出たら海斗に返そう。海斗はいらないという気もするけど。
「もうすぐ夕飯の時間だ。俺と一緒に行動して、夕飯の食べ方を学んでもらう。その後は部屋で休んでもらって構わない。風呂は個人の部屋についているから使い方が分からなければ俺に聞いてくれ。大浴場もあるが、あまり使用する者はいないな」
「はい!よろしくお願いします」
相変わらず憐さんは優しいなぁ、こんな先輩がいてくれて俺は何て幸せなんだろ。ここ数日ですっかり憐さんの優しさに惚れ込んでいる俺は笑顔で頷いた。
その日、俺はまだ人があまりいない食堂でハンバーグを食べた。海斗と憐さんは名前の長い知らない料理を食べていた。ハンバーグならば慣れているだろうと注文したものの、そのハンバーグからはとても高そうな味がした。
…庶民と金持ちの感覚の差にはまだ慣れそうにない。
明後日から新しいクラス。……不安は消えないけど、海斗も憐さんもいる。きっと大丈夫。
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