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生徒会
日曜の朝。布団がベッドに変わってフカフカ具合に慣れなかったりしたが、問題なく寝て起きることが出来た。
最早作業のように海斗の頬にキスをして起こすと、海斗が「もっと愛を込めて起こしてよ」なんてふざけた事を言ってくるが朝から海斗の戯言に付き合う気分ではない。
「朝食、食堂行くか?」
「んー。朝はそんなに食う気分じゃないんだよな。鈴離何か軽く作ってよ」
「軽くって言っても食材ないぞ。…あ、フルグラある。これでいいか?」
「え〜鈴離の手作りがよかった。でもしょうがないか、今度食材買い出しに行こうぜ」
フルグラを皿に入れて牛乳をコップに注ぎ、たわいも無い話をしながら朝食を取った。
今日は何をしようか、そんなことを考えていると玄関のチャイムが鳴る。慌てて玄関に行き、ドアを開くと憐さんが立っていた。
「憐さん、おはようございます。どうしたんですか?こんな朝早くに」
「桜舞、おはよう。今日は鳴宮に用事が会ってきたんだ」
「海斗に?」
俺が頭の上ではてなを浮かべていると、海斗も後ろから出てくる。海斗は憐さんには懐いたようで、憐さんを見て軽く会釈をした。
「鳴宮、単刀直入に言う、生徒会候補生にならないか?」
「生徒会…候補生…?」
「白百合練の生徒会の事は知っているか?家柄、ルックス、頭の良さを兼ね揃えたものしか入れないものなんだがうちの生徒会はそれが理由で立候補制じゃないんだ。現生徒会の者が候補生を選ぶことが出来てな」
そこで一旦言葉を区切った憐さんは、少し考えるような素振りをしたあと海斗を見据えた。
「鳴宮は桜練で成績も優秀、ルックスもいいし家柄も満点だろう?そこで、理事長から鳴宮を是非生徒会候補生にと」
「へ〜、凄いじゃん海斗。行ってみたら?」
俺がそういっても海斗は何故か不機嫌そうな顔のままだ。どうしたんだろう?
「候補生になったら鈴離といられる時間が減りますよね」
「……確かに候補生とは言っても生徒会の業務を覚えてもらったり会議に参加してもらったりする。今までと同じように時間は取れなくなるかもしれない。しかし、生徒会に入るメリットも沢山あるぞ」
憐さんがそう説得しても海斗はプイ、と横を向いてしまう。
「おい海斗、そんなくだらない理由で…」
「くだらない理由?!俺にとっちゃ1番大事な事なんだよ。
……そうだ。憐さん、俺鈴離と一緒だったら生徒会候補生になってもいいですよ」
得意げににやりと笑う海斗の言葉と裏腹に俺はピシリと固まった。そして思わず声を荒らげる。
「お前なぁ、無理に決まってるだろ?!俺は家柄はお前とはまるで違うしルックスも頭の良さだって…」
「鈴離はルックス満点頭の良さだって俺よりちょっと悪いくらいだろ!!」
ムキになって言い返してくる海斗にそのルックス満点、はお前が俺に謎のフィルターをかけてるから出た満点だろ、と悪態をついてやりたかったが憐さんの手前恥ずかしいので控えた。
「桜舞と一緒に…」
憐さんも憐さんだ、こんな馬鹿げた提案を受けて真剣そうに何かを考えている。
「れ、憐さん、考えなくていいですよ。無理ですよ」
「……無理ではない」
え!?と驚きの表情を浮かべた俺と、嬉しそうに前のめりになる海斗。
「桜舞はルックスも綺麗だし、成績も良かっただろう。問題は家柄だが、今桜舞は鳴宮の家に支払いをしてもらっている。つまり扶養に入っているようなものだ。そうとれば家柄もクリア出来るはずだ。何より生徒会に2人が入ってくれた方が俺としても何かあった時に対処しやすい。桜練から白百合練に突然編入してきたなんて例はないから生徒たちからの注目を浴びてしまうし…」
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