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「鈴ちゃ〜ん♡!!!」
……全然安心できない人がやって来た。
この数日間、1番の危険人物がこの珂神先輩だった。食堂でご飯を食べていると毎回やってきてはほっぺにチューしたり抱きついたり手を握ったり口説き落とそうとしてきたり、そこまでしなくてもってくらいベタベタしてくるのだ。
「ゲッ!珂神先輩!!」
最初はビクビクしていた俺もこうも構われると素も出てくる。
「ゲッだなんて酷い〜!俺はこんなに愛してるのに!!!」
え〜んと泣き真似をする珂神先輩を無視しようとしても、無視はダメ!と腕にしがみついてくる。
「あのですね、確かにベタベタするって案ですけどここまでしてくれなくてもいいと言いますか、一般生徒が居ないここでベタベタされても困ると言いますか」
「だから俺は作戦なんて関係なく鈴ちゃんがお気に入りなんだってば〜!いつになったら信じてくれるの??」
「信じるも信じないもなくて俺は男の人とどうこうする趣味はないんです…」
「大丈夫、気持ちいいことしたらよさがわかるって♡今夜あたりどう?俺上手いよ〜?」
「な…!」
これだ、これが嫌なんだ。
珂神先輩は平気でスレスレの事を言ってくるから、慣れていない俺は毎回しどろもどろになってしまうのだが、その反応すら可愛いと言ってくるものだから対応の仕方が分からない。
「鈴ちゃん顔赤くしちゃって可愛い〜!ねね、ホントに今度一緒にデート行こうよ」
「駿」
春川先輩がニコリと微笑んで珂神先輩の名前を呼ぶと、先程までマシンガントークしていた珂神先輩が途端に口を噤んだ。
「元気なのはいいよ。でも相手の事をちゃんと考えないとね」
「さ、さくちゃん〜……俺はただ…その…ご、ごめんね?怒ってる?」
「怒ってはないよ。でも僕、駿は確かに下半身人間だけど人の気持ちはちゃんと考えられる子だって思ってたんだけどな」
「…………以後気を付けマス」
しょんぼりと珂神先輩は肩を落とす。
…凄い。
あの言葉数でマシンガントークの珂神先輩を黙らせてしまうなんて…。
まるで春川先輩を怖がってるような態度だったけど、春川先輩は優しくて温厚なイメージがある。
喧嘩だって強そうなのは珂神先輩の方だし…そういえば春川先輩、東先輩の事も手なずけている感じだったな。
俺の不思議そうな顔を見たからか、東先輩がそっと俺に耳打ちをした。
「朔夜…怒ると怖いんだ…俺も、駿も、怒られたことあるから…言ったの内緒ね…?」
春川先輩って怒ったら怖いんだ……。見てみたいような、見なきゃ行けない場面には遭遇したくないような。
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