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「夕飯、俺の部屋で食べるか?」
「そんなこと出来るんですか?」
「簡単なものでよければ作る」
「えっ、お金持ちの人って料理出来るんですか?!」
桜舞が驚いたようにそういって、その後ハッとしたようにすぐすみません!と頭を下げた。
俺はまた思わず笑う。どんな偏見だそれは。
「え〜っ、でも憐さんの手料理食べてみたいです!」
目をキラキラさせて俺を見つめる桜舞、凄く可愛い。
……そういえば神宮路の言う話ではイチャイチャ?しろって言ってたな。
俺はそう思い出して、桜舞の肩を抱いた。さっきから複数人周りの生徒達が見ていたから、その生徒達は黄色い悲鳴を上げて目を逸らしたりこっちを見たりしている。
桜舞は途端に緊張したのか、「れ、憐さん?どうしたんですか?」ってしどろもどろで顔を赤くしながら俺をチラチラ見上げてくる。
その仕草も可愛くて、でも困らせたいわけじゃないから俺は作戦の話をした。すると安心したように桜舞が力を抜く。
…………安心されるとされるでちょっと気に入らないな。
俺は悪戯心が湧いて、桜舞の唇の横にキスをした。角度的に周りから見たら口にしたように見えたかもしれないが。
ザワッと一段と大きくざわめく周囲の生徒たち。桜舞から反応が返ってこないなと思ってみると、桜舞は俺の腕の中で真っ赤になって震えていた。
「れ、れ、憐さんの変態ッ!!!!!!!!」
桜舞の大声が中庭に響く。俺がポカンとしていると、桜舞は顔を真っ赤にしたままダッシュで逃げていった。
「憐様に変態だなんて…」
「い、今キスしてなかった??」
等、周りからヒソヒソと聞こえてくる。
……何か間違えたか?イチャイチャするってこういう事だと思っていた。珂神はよくああいう事を桜舞にしていた気がしたが。
俺は少ししゅんとしながら、手元のパンを見つめた。
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