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一瞬憐さんや海斗じゃないかと期待して振り返ったが、目の前にいたのは知らない男子生徒2人組だった。
1人は金髪でもう1人は茶髪。ピアスを空けていて制服を着崩していて、白百合練ではあまり見ないような以下にも不良という見た目だった。
「どうしたの?迷子?」
見た目とは裏腹に優しい言葉にほっと安心する。
「あの…はい。白百合練の入口に帰りたいんですけど……」
ここでモタモタしている訳にもいかない。もうすぐ午後の授業が始まってしまうし…。
「あー、もしかして桜練から白百合練に編入してきて生徒会のお気に入りになってるって君のこと?」
茶髪の生徒が途端にニヤニヤと意地悪な笑みを浮かべて俺を見る。圧倒的に嫌な予感が脳内を占め始め、思わず後ずさりした。
「生徒会のメンバーに鬼木岳って奴いるだろ?あのヤクザの息子のさ」
てっきり可愛いだの最近言われていた言葉や、先輩たちから散々脅された襲われることについて考えていたが全く違う言葉が出てきて全身の力を抜く。というかこんな事を考えていた自分が自意識過剰みたいで恥ずかしくなってきた…。
「はい、いますけど…」
「君さ、その鬼木にも気に入られてるの?」
本当は普通に面倒臭がられているが、ここで気に入られてませんなんて言ったら嫌々俺のためにお気に入りムーブをやってくれている鬼木先輩に申し訳が立たない。俺は小さく「まぁ…一応」と返事をした。
そう返事をすると、茶髪と金髪は「やっぱそうだって」とニヤニヤしながら何やら耳打ちをしている。
どう見ても、友好的とは思えないその態度にすぐにでも逃げ出そうかと身構えていると、力強く腕を掴まれる。
「ちょっ、な、何するんですか?!」
ぶんぶんと腕を売り払おうとするも無駄な抵抗に終わり、俺は精一杯相手を睨みつけた。
「別に君に恨みはないんだけどね。俺たちじゃなくて鬼木を恨んでよ。アイツ、家がヤクザだかなんだか知らないけど威張りくさってムカつくわけ。自分だって裏世界の人間のくせに、何様だよって思うじゃん」
「俺達三年もさぁ、もっと自由に遊びたいわけよ。それがアイツがいるせいで何も出来ねーし、何より俺なんて殴られたことあんだぜ?
そこでよ。鬼木のお気に入りのお前に酷いことしちゃって憂さ晴らししよっかなって。心配すんなよ、痛いことはお前が暴れない限りなるべくしねーからさ」
……な、
何を言ってるんだこの人たちは……?!
ど、どうしよう。どうやってこの盤面を切り抜ければ……。
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