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…………別にこの性格と家だ。やってきた事も含めて陰口を叩かれるのも嫌われるのも承知している。
だけど ─── …
「…………俺だって好きでヤクザの家になんて生まれてねぇよ」
誰にも聞こえないよう小声で呟いてため息を着くと、予想外の桜舞の声が耳に飛び込んできた。
「お、おかしいですよ!!確かに鬼木先輩はちょっと……いや、かなり……怖いですけど!ヤクザの息子だからって理不尽に何かされたことなんてありませんし!せ、先輩たちが何かしたから殴られたんじゃないですか……。
だ、大体、鬼木先輩に恨みがあるのを俺にぶつけたって鬼木先輩には1ミリも響きませんから!!!」
こうさぎみたいに青ざめて震えているくせに一丁前に言い返す桜舞。
それをきいた不良達のニヤニヤしていた顔色が変わる。
「はぁ?何言っちゃってんの。鬼木がヤバいのなんてヤクザの息子ってだけで丸わかりじゃん」
「綺麗な顔してるからって調子乗ってる感じ?その顔で生徒会に色目使ったんだろうけど俺達ホモじゃないから許してあげられないんだよね〜」
「でももういっそ脱がしちまう?全裸の写真でも撮ってさ」
頭にきつつも小馬鹿にしたような態度に、俺が思わず止めに入ろうとした時───。
大きな警報音が校庭に響き渡った。
驚いたような顔をして耳を塞ぐ不良どもをよそに、桜舞はめいいっぱい息を吸い込むと、
「だ、誰かーーーー!!!!!!助けてください!!!!!」
と叫んだ。
思いもよらない防犯ブザーの音と、桜舞の叫び声に人は少ないとはいえ数人遠くにいた生徒たちがザワザワと集まりだしている。
俺はと言うと、校舎の影で微かに笑いをこらえていた。
学校の中で防犯ブザーの音を聞くことになるとは。そしてあの桜舞の絶叫。さっきまで明らかに不良どもが俺たちの方が優勢だと余裕の表情だったのに、今は焦ったように辺りを見回し、桜舞の防犯ブザーの音を止めようと桜舞の腕を掴んでいる。
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