庶民の俺が金持ち練に編入するまで

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「じゃあまだ俺にもチャンスあるんだ?鈴離ちゃんだっけ。俺は梓 あずさ。梓って呼んで欲しいな?よろしくね」 「チャ、チャンスって俺男ですよ?」 「……兄貴何も説明してねぇのかよ。まぁ、あの鈍感兄貴じゃ無理か」 はぁ、とため息をついた梓さんにハテナを浮かべていると俺の肩を抱いたままの海斗の方は何かを察したようにまじかよ……と呟いている。 「なぁ鈴離、やっぱり白百合練に入るのやめない?」 「はぁ?!今更無理に決まってるだろ!理事長にも海斗の両親にもなんて言うんだよ」 「やっぱ無理だよなぁ、でもなぁ…」 まだ何かをブツブツと呟いている海斗をなんだこいつ、と眺めていると、 「桜舞、鳴宮。来ていたのか」 俺たちの騒ぎ声が聞こえたのか、梓さんの後ろからスっと憐さんが顔を出した。 「あ、風見さんこんにちは。風見さんが案内してくれるって聞いたんですけど…」 「ああ、勿論案内する。まずはお前たちの部屋の説明からしよう」 そういって微笑んだ憐さんを相変わらず綺麗な顔だなぁと思って眺めていると、梓さんが鼻で笑った。 「生徒会長直々に寮を案内?随分気に入ってるんだ」 「……何の話だ。俺はただ理事長から頼まれているから動くだけだ」 「本当かよ」 どこか蔑むような瞳の梓さんに、俺は一瞬で理解してしまった。この兄弟多分仲が悪い。 険悪な雰囲気に耐えきれず、それじゃあ俺たちは…と憐さんの腕を引いて梓さんにあたまをさげる。梓さんは未だに憐さんを少し睨んでいたが、俺には笑顔で手を振ってくれた。 こ、怖かった……美形の睨みってなんでこんなに怖いんだ。 「…見苦しいところを見せてしまってすまない。昔はもう少し仲がよかったんだが、数年前からあの調子でな。なかなか上手くいかなくて」 仲が悪い、とは言ったが梓さんが一方的に憐さんを嫌っているらしい。憐さんが弱々しく微笑む。何も言えないままふるふると首を横に振った。 そのまま憐さんはカードキーのようなものを取り出すと、隣の部屋の機械に差し込んだ。ピピッという音がして、ガチャリとドアが開く。 「…うわぁ、すっごい」 思わず声を上げる。とてもではないが俺なんかじゃ一生かかっても住めないような、お高いホテルの一室のような部屋がそこにはあった。シャンデリアに始まり、高そうな上品な家具が並べられている。 ……これが高校の寮かよ。 悪態を着きたくなってしまうほどだ。海斗の家も高いものが並んでいるから、多少慣れてはいるけどやっぱり緊張する。壊したりしたらどうなるんだろうか。 「へ〜、結構いいもの揃えてるんだな。流石」 海斗も少し感心したように家具を撫でている。 「部屋の中のものは自由に使ってもらって構わない。これがカードキーだ。失くすとまた発行しなくてはならないから、くれぐれもなくさないように。一応予備のカードキーもあるから渡しておく。それから、オートロック式なのでカードキーを持たずに外に出ると部屋に入れなくなる。気を付けるんだぞ」 つらつらとマニュアルのように繋ぐ憐さんの言葉を頷きながら聞いて、人生で初めてカードキーを俺は所持した。こうしていると何だか自分が金持ちになったみたいだ。人生って何があるか分からない。こんなはずじゃなかったのに。 部屋の説明が終わると次は食堂の説明と、憐さんが歩き出す。校舎内も広かったのに寮も随分と拾い。これは迷わないように気をつけなくてはと気持ちを引き締めた。
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