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ダンジョンで出会うのは大概男な件
ダンジョンの低階層はソロでも攻略可能で、出会う魔物も単体と冒険者なりたての新米でも怪我を負う程度で死ぬ事はない。
罠が無いのも理由の一つだが、その為なのか宝箱は無い。鉱石は低階層でも採れるので、依頼は常に出されている。
魔石も低階層だと小さいが、魔道具に使用される為に此方も依頼は常に出されている。
私はツルハシを武器代わりに装備して、重さを軽減する魔道具を背負い袋に取り付けてダンジョン内を散策していた。
鉱石の採れるポイントを探しながら出てくる魔物をツルハシを使わずに始末する。耐久値が下がると鉱石を採る最中に壊れてしまう恐れがあるらだ。
ダンジョンで一夜を明かす場合は更にテントや食糧等の必要な物が増えてしまうが、今回は低階層なので日帰りが可能。
最低限の装備で効率良く鉱石と魔石を回収していく。
「一旦休憩」
私はツルハシを脇に置いて壁に背を向けて座る。水袋の水を飲んで、塩をまぶした携帯食を食べてかいた汗で失った水分と塩分を補給する。
旅なれた服は汗を吸い上げ肌に纏わり付き少し不快感が増す。しかも、ダンジョンは外とは違い太陽の光は入らず、薄明かりで湿気が多く涼しいので乾く迄に時間がかかる。
「やっぱり、お金を貯めて今度生活魔法を覚えよう」
魔法は魔力が有れば誰でも使える。ただし、覚えるためにはお金がかかる。生活魔法は村人でもお金さえ払えれば簡単に覚えられる。
冒険者になりたての私では、まだ払えるお金が足りていない。依頼をこなして手に入るお金を貯めていけば何れは覚えられる。
休憩を止めて立ち上がり、採掘していた場所を改めてみると、掘って削れていたはずの岩肌が復元しており、散らかっていた砕石が跡形もなく消えていた。
「もう少し採掘しようかしら・・・」
背負い袋の中身は鉱石と魔石で埋まっているが空きはまだある。満杯にしても背負いきれる位には重さが魔道具で軽減されるはず。
生活魔法のた為にも実入りは多い方が良い。私は再び採掘しようとツルハシに手をかけた際に、誰かが足を踏み入れる音を聞いた。
「誰?」
「すまない。知り合いがこの辺りに居るはず何だが君以外に此処には居ないよね?」
「居ないわよ。それより見慣れない格好ね。低階層で見かける装備じゃないわ」
私は現れた男を警戒する。繊細な刺繍が施されたローブ姿で手には何も持っていない。背負い袋も身に付けておらず、あまりにも身軽だ。
「中階層の宝箱で手に入る装備だからね、見慣れないのはその為さ。採掘の途中だったみたいだね、邪魔して悪かった」
男は至極当然の様に答え、私が手に持つツルハシに目をやり誤りだした。
明らかに私よりもダンジョン到達階層が上なのに、何故こんなにも低姿勢なのか。屑な野郎なら自慢してみすぼらしい私の姿に苦笑する事だろう。
必要以上に近寄らず、此方をじろじろと観ることもない。紳士な対応とは言い難いが、冒険者のマナーは最低限守ってはくれている様だ。
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